手を差し出した。彼は手を貸してやった。彼女は彼を湿った冷やかな地面にさわらした。彼は彼女の手を離さなかった。二人のからみ合った指は土の中にはいっていた。彼はモデスタを抱擁した。彼女は彼に接吻《せっぷん》した。
 二人は立ち上がった。彼女は摘み取った菫のうち、勢いのいいのを彼に差し出し、しおれたのを自分の胸にさした。二人は膝の塵《ちり》を払ってから、一言もかわさないで墓地を出た。野には雲雀《ひばり》が歌っていた。白い蝶《ちょう》が二人の頭のまわりを飛んでいた。二人はある牧場の中に腰をおろした。村の煙がまっすぐに、雨に洗われた空へ立ち上っていた。静まり返ってる運河が、白楊樹の間に輝いていた。青い光の霞《かすみ》がうっすりと、牧場や森を包んでいた。
 しばらく黙っていた後、モデスタは、あたかも眼が見えるかのように、いい天気のことを低く話した。唇《くちびる》を少し開いて空気を吸い込んでいた。生きものの音を聞き澄ましていた。クリストフもまたそういう音楽の価値を知っていた。彼は彼女が考えながら言い得ないでいる言葉を言った。草の下や空気の奥に聞こえる、かすかな鳴き声や戦《そよ》ぎの名を挙げた。彼女は
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