ゴットフリートの魂が満ちているこの田舎《いなか》に、偶然たどりついて来た今、この神聖な一夜を少しも無駄《むだ》に失いたくなかった。しかし、不規則に断続して流れる泉の音や、蝙蝠《こうもり》の鋭い鳴き声などに耳を傾けてるうちに、青春の頑丈《がんじょう》な疲労は彼の意志にうち勝った。そして彼は眠りに落ちた。
 彼が眼を覚ました時には、太陽は輝いており、農家の人々はもう働いていた。下の室には老婆と子供たちしかいなかった。若夫婦は畑に出ていた。モデスタは乳をしぼりに出かけていた。捜しても見当たらなかった。クリストフは彼女の帰りを待とうとしなかった。彼女にぜひ会いたいとも思っていなかった。そして先を急ぐからと言った。皆によろしくと婆さんに頼んでから、彼は出かけた。
 彼が村から出ると、道の曲がり角に、山※[#「木+査」、第3水準1−85−84]子《さんざし》の籬《まがき》の根元の斜面に、盲目娘のすわってるのが見えた。
 彼女は彼の足音をきいて立ち上がり、微笑《ほほえ》みながら近づいてき、彼の手を取って言った。
「いらっしゃい。」
 二人は牧場を横切って上ってゆき、花の咲いてる小さな野に出た。方々に
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