開いて、その下に隠れてる思想を、人からも知られずまたおそらくみずからも知らないで去っていったこの魂の秘奥《ひおう》を、どんなにか読み取りたかった! しかしこの魂自身は、そういうことを少しも求めてはいなかった。その知恵はすべて、知恵を欲しないことにあった。自分の意志を事物に強《し》いたがらないことに、事物の成り行きに身を任せ、その成り行きを受け入れ愛することに、あるのだった。かくて彼は事物の神秘な本質と同化していた。そして、この盲目娘や、クリストフや、またきっと人の知らない多くの者に、あれほどいいことをしてやったのも、自然にたいする人間の反抗の常套《じょうとう》語をもたらす代わりに、自然そのものの平和を、和解を、もたらしてやったからである。彼は野や森のように、人に恵みを与えていたのである。……クリストフは、ゴットフリートとともに野の中で過ごした晩のこと、子供のおりに連れて行かれた散歩のこと、夜中に聞かされた物語や歌のこと、などを思い浮かべた。絶望の冬の朝、町を見おろす丘の上を、叔父《おじ》とともに試みた最後の散歩、それを思い起こした。そして眼に涙が湧《わ》いてきた。彼は眠りたくなかった。
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