ことができます、私は心からあの人を抱きしめました。するとあの人は私に言いました。
『もう私は出かけていいようだ。私がいなくても済むようになったから。』
私は引き止めようとしました。けれどあの人はこう言いました。
『いや、もう私は出かけなけりゃならない。これ以上とどまってはいられない。』
だれも知ってるとおり、あの人は彷徨《さまよ》えるユダヤ人に似ていました。一つ所に住んでることができませんでした。無理に引き止めるわけにもゆきませんでした。そしてあの人は出かけました。けれども、前よりはしばしばここを通るように都合してくれました。そのたびごとにモデスタは大喜びをしました。あの人が来てくれたあとでは、きっと前よりもよくなっていました。家の仕事にかかるようになりました。兄が結婚してからは、子供たちの世話をしてくれます。今ではもう決して愚痴をこぼしませんし、いつも楽しそうにしています。娘は眼が見えてもこんなに幸福でいられるだろうかと、私は時々思うことがあります。ええそうですとも、娘のようになって、賤《いや》しい人たちや悪い事柄が眼につかなくなる方がいいと、そんな考えが起こる日はよくあるではあ
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