りまで歌った。彼は立ち上がって天候を見に行った。そしてなんの気もなく室の中を隅々《すみずみ》まで見渡すと、戸棚《とだな》のそばの角のところに、ある物を見つけてはっとした。それは頭の曲がった長い杖《つえ》で、粗末な彫刻を施した柄《え》は、身をかがめてお辞儀してる小さな男を現わしていた。クリストフはそれをよく知っていた。昔それで子供心に遊んだことがあった。彼は杖に飛びつき、息つまった声で尋ねた。
「どうして……どうしてこれをおもちですか。」
男は彼をながめて言った。
「友だちが残していったんです、亡《な》くなった古い友だちが。」
クリストフは叫んだ。
「ゴットフリートですか。」
皆彼の方をふり向きながら尋ねた。
「どうして御存じですか。」
クリストフが、ゴットフリートは自分の叔父《おじ》だと言うと、人々は皆びっくりした。盲目娘は立ち上がった。毛糸の玉が室の中にころがった。彼女は編み物をふみつけながらやって来て、クリストフの手をとってくり返した。
「あなたが甥《おい》ごさんですか。」
皆が一度に口をきいていた。クリストフの方でも尋ねた。
「でもあなた方は、どうして……どうして御存じ
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