で、絶望的な愛情をもってすがりついてくる人々で、すっかり疲らされていた。そのうえ彼は年若くて、再会の期があることと思っていた。何も世界の果《はて》へ出かけて行くのではなかった。――老人の方では、世界の果よりもっと遠くへ自分がやがて行くことを知っていた。そして彼は永久の見納めにクリストフをながめていた。
 彼は極度に疲れていたにもかかわらず、停車場までついて来た。細かな冷たい糠雨《ぬかあめ》が音もなく落ちていた。停車場でクリストフは、金入れを開きながら、家までの汽車賃が不足してることに気づいた。シュルツが喜んで貸してくれるだろうとは承知していた。しかしそれを頼みたくなかった。……なぜか? 何かの世話をする機会を――幸福を、愛してくれる人になぜ与えないのか?……彼はなんとなくそれを欲しなかった。おそらく自尊心からもあろう。彼は途中のある駅までの切符を買った。残りの道は歩いて行こうと考えていた。
 発車の時刻が鳴った。客車の踏み段の上で、二人は抱擁し合った。シュルツはクリストフの手に、夜中に書いた詩をそっと握らした。彼は車室の下のプラットホームに残った。別れの瞬間が長引く時よく起こるように、
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