その権利がない。」
そして、起こしに行かなければならないと思った。その扉《とびら》をたたいた。すぐにはクリストフの耳にはいらなかった。なおたたきつづけなければならなかった。それが老人にはつらかった。彼は考えていた。
「ああ、なんとよく眠ってることだろう! お午《ひる》までも寝つづけるかもしれない……。」
ついに、壁の向こうから、クリストフの快活な声が答えた。彼は時間を知ると驚きの声を挙げた。室の中を駆け回り、騒々しく身支度をし、切れ切れの節《ふし》を歌いながら、壁越しに親しくシュルツを呼びかけ、冗談を言ってるのが聞こえた。老人は悲しくなってはいたが、それに笑わせられた。扉が開いた。彼はうれしげな顔をし、休らったさわやかな様子で現われた。老人に心を痛ましめてることはまったく考えていなかった。実際は少しも急いで帰る必要はなかった。なお数日滞在してもいっこう差しつかえなかった。そうしたらシュルツはどんなに喜んだであろう! しかしクリストフはそれをはっきり思いつき得なかった。それにまた、彼は老人にたいしていかなる愛情をいだいていたにせよ、出発する方がずっと気楽だった。たえず話しつづけた一日
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