てきた。その時、ごく遠くまできく彼の鋭い眼は、牧場の叢《くさむら》の影に横たわってる男の姿を、向こうに見出した。彼はクリストフを見知らなかった。向こうの男が彼であるかどうか、知る術《すべ》はなかった。男はこちらに背中を向け、頭を半ば草の中に埋めていた。シュルツは牧場の周囲の道をうろつきながら、胸を躍《おど》らせていた。
「彼だ……いや彼じゃない……。」
呼びかけることもなしかねた。ふといいことを思いついた。彼はクリストフの歌曲[#「歌曲」に傍点]の最初の句を歌いだした。
[#ここから3字下げ]
起てよ、振い起てよかし……
[#ここで字下げ終わり]
クリストフは水から出た魚のように飛び上がって、その続きを大声に歌った。うれしげにふり向いた。真赤《まっか》な顔をして、髪には草がついていた。二人はたがいに名前を呼び合って、両方から駆け寄った。シュルツは道の溝《みぞ》をまたぎ越し、クリストフは柵《さく》を飛び越した。二人は心をこめて握手をし、大声に話したり笑ったりしながら、いっしょに家へ帰ってきた。老人は自分の失策を話した。クリストフは一瞬間前では、新たにシュルツに会いに行かないで、そ
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