を見のがすほど彼が馬鹿だろうとは、思いつかなかったと答え返した。しかし老人は、彼女相手にぐずぐず言い合いはしなかった。一刻も猶予しないで、ふたたび階段を駆け降り、隣りの人たちが教えてくれる漠然《ばくぜん》とした方向へ、クリストフを捜しに出かけた。
 クリストフは、だれもいないし一言の言い訳も受けないのを、憤慨していた。次の汽車の時間までどうしていいかわからないので、美しく見える野原を歩き回った。なだらかな丘に囲まれてる、小さな静かな安らかな町だった。人家のまわりの庭、花の咲いた桜樹《おうじゅ》、緑の芝地、美しい樹影《こかげ》、擬古式の廃墟《はいきょ》、大理石の円柱台の上、緑の間には、昔の女王らの白い胸像、そのやさしいかわいい顔つき。町の周囲は皆、牧場と丘陵だった。花咲いた灌木《かんぼく》の中には、鶫《つぐみ》のうれしげな鳴き声が、快活な明朗なフルートの小合奏をしていた。クリストフの不機嫌《ふきげん》は間もなく消えた。彼はペーテル・シュルツを忘れてしまった。
 シュルツ老人は、通行人らに尋ねながらむなしく町中を駆け回った。町の上にそびえてる、丘の上の古城にまで上がった。悲しい心でまた降り
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