できた。彼はそれらを考えたくなかった。しかしそれらはいつまでもそこにあった。彼はそれらを感じた。それらのことの追憶が、刺すような苦痛をもって時々彼の心を過《よぎ》った。
「ああ、神よ、神よ!」
 彼は静かな夜の中でうなった。――それから、不快な考えをすべて遠ざけた。それらを打ち消した。彼は信頼したかった、楽観したかった、人を信じたかった。そして人を信じていた。彼の幻は幾度か荒々しくこわされたことであろう!――しかしまた他の幻が浮かんできた、いつでも、いつでも……。彼は幻なしにはいられなかった。
 見知らぬクリストフは、彼の生活のうちの光の焦点となった。最初に受け取った冷淡な無愛想《ぶあいそう》な手紙は、彼に苦しみを与えたはずだった。――(おそらく実際に与えたろう。)――しかし彼はそうだと認めたくなかった。そして子供らしい喜びをさえ感じた。彼はいかにも謙譲であって、人に求むることがいかにも少なかったから、人から受けるわずかなもので、人を愛し人に感謝したいという要求を満たすに足りるのであった。クリストフに会うなどとは、望みも得ない幸福だった。今ではライン河畔まで旅するにはあまりに年老いてい
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