の中で、自分の理想と背馳《はいち》する種々なこまかい昼間の出来事を、思い浮かべては嘆息した。老婢のザロメが、付近の上《かみ》さんたちと陰で自分の悪口を言ってること、また毎週の会計をきまってごまかしてること、それを彼はよく知っていた。学生らが必要な間は自分におもねってるが、期待してる助けを受けてしまった後には、自分をうち捨ててしまうこと、それを彼はよく知っていた。隠退後は大学の古い同僚らからもすっかり忘れられてること、また自分の後継者が、自分の論説を名前も挙げないで盗み取り、あるいは名前を挙げる時には、不実なやり方をして、無価値な一句を引用したり、誤謬《ごびゅう》を拾い上げたりしてること(それは批評界によく行なわれてる方法であるが)、それを彼は知っていた。老友のクンツが今日の午後もまたひどい嘘《うそ》を言ったこと、も一人の友のポットペチミットが数日間と言って借りていった書物は、もういつまでも返されることがあるまいということ、それを彼は知っていた。右のことは、生きた人と同様に書物を愛惜してる彼のような者に取っては、非常に悲しいことだった。また古い新しい他の多くの悲しい事柄が、彼の頭に浮かん
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