旋《がいせん》であった。
老人は身体じゅうを震わした。あたかも友だちから手を取られて駆けさせられる子供のように、あえぎながらその厳《おごそ》かな音楽についていった。胸が動悸《どうき》した。涙が流れた。彼はつぶやいた。
「ああ、神よ!……神よ!……」
彼はすすり泣きを始め、また笑っていた。幸福だった。息がつまった。激しく咳《せ》きこんだ。老婢《ろうひ》のザロメが駆けつけてきた。彼女は老人が死にかけてるのかと思った。彼はなお続けて、涙を流し咳《せ》きこみ、そしてくり返していた。
「ああ神よ!……神よ!……」
そして咳の発作から発作へ移る短い間の時間に、彼は快い鋭い笑いをもらしていた。
ザロメは彼が狂人になったのだと思った。それから、その激情の原因を知ると、彼を荒々しく責めたてた。
「つまらないことでそんなになるということがあるものですか!……それを私にお渡しなさい。もっていってしまいます。もうあなたにはお目にかけません。」
しかし老人は、なお咳き込みながらもしっかりしていた。構わないでくれとザロメに叫んだ。彼女が強情を張ると、彼は癇癪《かんしゃく》を起こし、怒鳴りつけ、喉《のど》
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