そして入口まで送ってきたが、一言引き止めようともせず、また来るようにも言わなかった。
クリストフはがっかりして街路に出た。当てもなく歩いていった。機械的に二、三の通りをたどった後、前に乗って来た電車の停留場に出た。なんの考えもなくまたそれに乗った。手足にも力がぬけはてて、腰掛の上に身を落した。思慮をめぐらすことも、自分の考えをまとめることもできなかった。何にも考えてはいなかった。自分の心中をのぞき込むのが恐ろしかった。まったく空虚だった。その空虚は自分のまわりに町の中にあるような気がした。もう息もつけなかった。その霧、それらの大きな家々が、彼の呼吸をふさいだ。彼はもう一つの考えしかもたなかった。逃げること、できるだけ早く逃げること――あたかも、この町から逃げ出せば、そこに見出した苦《にが》い幻滅を残して行けるかのように。
彼は旅館に帰った。十二時半前だった。二時間以前に彼はこの旅館にはいったのだった――いかなる光明を心にいだいていたことぞ!――が今は、すべて消え失《う》せてしまっていた。
彼は昼食を取らなかった。室へも上がらなかった。主人が驚いたことには、彼は勘定書を求め、一晩
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