。そして彼らが考えたことを、かならず民衆は考えるようになると。――しかしハスレルはもう聞いていなかった。彼はまた茫然《ぼうぜん》自失の状態に陥っていた。それは彼のうちに眠ってる生命力の衰弱から来たものだった。クリストフはきわめて健全であって、そういう急激な変調を理解できなかったから、もう負けだということを漠然《ばくぜん》と感じた。しかし勝ちかけたように思ったすぐあとなので、あきらめることができなかった。彼は絶望的な努力をして、ハスレルの注意を呼び起こそうとつとめた。楽譜を取り上げて、ハスレルから指摘された不規則さの理由を、説明しようとつとめた。ハスレルは安楽|椅子《いす》に埋まって、陰鬱《いんうつ》な沈黙を守っていた。賛成もせず反対もしなかった。ただおしまいになるのを待っていた。
クリストフは、もう仕方がないことを見て取った。文句の途中で言いやめた。楽譜を巻き納めて立ち上がった。ハスレルも立ち上がった。クリストフは恥ずかしくまた気おくれがして、口ごもりながら詫《わ》びを言った。ハスレルは傲慢《ごうまん》なまた退屈そうな品位を見せながら、軽く身をかがめ、冷やかにていねいに手を差し出し、
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