も奪われてしまった。――愛情、それがいかにちっぽけなものであろうとも、それなしにはだれの心も生きられるものではない。
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     三 解放


 彼にはもはや一人の味方もなかった。友は皆散り失《う》せてしまった。彼が困ってる時にはいつも助けに来てくれる、また彼が今や最も必要としている、あのなつかしいゴットフリートも、長い前にどこかへ行ってしまって、こんどはもう永久に帰って来なかった。この前の夏のある晩、遠い村の名がしるしてある太い字体の手紙が来て、ルイザに兄の死んだことを知らした。この小行商人は、健康が悪いにもかかわらず頑固《がんこ》に放浪の行商をつづけていて、旅先で死んだのである。彼は遠いその地の墓地に葬られた。かくて、クリストフを支持してやり得たかもしれない男らしい朗らかな最後の友情は、深淵《しんえん》の中に没してしまったのだった。彼は今や、年老いて彼の思想には無関心な母親――彼を愛してばかりいて理解してはいない母親と、ただ二人きりであった。彼の周囲は、広漠《こうばく》たるドイツの平野、陰鬱《いんうつ》なる大洋であった。それから出ようと努力することに、ますます深く沈
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