ないと考えた。)
「フランスにだって真面目なものもありますわ。」と彼女は当惑して言った。
彼は彼女の正直そうな小さな顔、丸く出てる額《ひたい》、小さなまっすぐな鼻、細そりした頤《あご》、栗《くり》色の髪に縁取られてる痩《や》せた頬《ほお》を、うちながめた。しかし彼の眼に映ってるのは彼女ではなかった。彼はあの美しい女優のことを考えていた。彼はくり返し言った。
「あなたがフランス人だとは実に不思議だ!……ほんとうにあなたはあのオフェリアと同じ国の人ですか。そうだとはだれにも思えないでしょう。」
彼はちょっと黙った後につけ加えた。
「あれは実にきれいですね!」
彼は、隣席の女にとってはあまりありがたくない比較を、彼女とオフェリアとの間に試みてる自分の調子に、みずから気づかなかった。彼女の方はよくそれを感じた。しかし彼女はクリストフを恨まなかった。なぜなら、彼女も彼と同じ考えだったから。彼はあの女優に関するいろんなことを、彼女から聞き出そうと試みた。しかし彼女は何にも知らなかった。明らかに彼女は、芝居のことにはほとんど通じていなかった。
「フランス語が話されるのを聞くのは、あなたには愉快
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