足音が聞こえるようだ。」
ミルハは歌いつづけていた。
「ちょっと黙っておくれ。」
ミルハは口をつぐんだ。
「いや、なんでもなかった。」
彼女はまた歌い出した。
クリストフはもうじっとしておれなかった。
「道に迷ったのかもしれない。」
「迷ったんですって? 迷うはずがないわ。エルンストさんはどの道でも知ってるから。」
おかしな考えがクリストフの頭に浮かんだ。
「向うが先に着いて、僕たちが来ない前にここから出かけたんじゃないかしら。」
ミルハは仰向けに寝そべり、空を見ながら、歌の中途で、狂人のように笑い出し、息もとまるほどだった。クリストフは言い張った。彼らは停車場へもう行ってるに違いないと言って、そこへ降りてゆきたがった。ミルハはとうとう起き上った。
「そんなことをすればかえってはぐれてしまうだけだわ。……停車場のことなんかなんの話もなかったわ。ここで落合うことになってたんじゃないの。」
彼はまた彼女のそばにすわった。彼女は彼が待ちくたびれてるのを面白がっていた。彼は自分を見守《みまも》ってる彼女の皮肉な眼つきを感じた。彼は真面目《まじめ》に心配しだした――彼ら二人のために
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