ジャン・クリストフ
JEAN CHRISTOPHE
第三巻 青年
ロマン・ローラン Romain Rolland
豊島与志雄訳
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)囁《ささや》き
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)女|弟子《でし》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]
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一 オイレル家
家は沈黙のうちに沈んでいた。父の死去以来すべてが死んでるかと思われた。メルキオルの騒々しい声が消えてしまった今では、朝から晩まで聞こえるものはただ、河の退屈な囁《ささや》きばかりであった。
クリストフは執拗《しつよう》に仕事のうちに没頭していた。幸福になろうとしたことをみずから罰しながら、黙然として憤っていた。哀悼の言葉にもやさしい言葉にも返辞をしないで、傲然《ごうぜん》と構え込んでいた。日々の業務に専心し、冷やかな注意で稽古《けいこ》を授けた。彼の不幸を知ってる女|弟子《でし》たちは、彼の平
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