んだ調子で言った。
彼はランプをテーブルの上に置きに行った。
ルイザは叱《しか》られた小娘のように口をとがらした。ジャン・ミシェルは横目で彼女を眺《なが》めて、そして笑った。
「きれいな奴だと言ってもらおうとは、お前も望んでやすまい。お前にだってきれいだとは思えまい。だがいいさ、お前のせいじゃない。赤ん坊てものはみんなこんなものだ。」
子供はランプの炎と老人の目差《まなざ》しとに驚き、ただ惘然《ぼうぜん》として身動きもしなかったが、やがて声をたて始めた。おそらく彼は母親の眼の中に、苦情を言うがいいと勧めるような愛撫《あいぶ》を、本能的に感じたのであろう。彼女は彼の方へ両腕を差出して言った。
「私にかしてください。」
老人はいつもの癖で、まず理屈を並べたてた。
「泣くからといって子供の言うままになってはいけない。勝手に泣かせることだ。」
しかし彼は子供のところへ来て、それを抱き上げ、そしてつぶやいた。
「こんな醜い奴は見たことがない。」
ルイザはわなわなしてる手で子供を受取り、胸深く抱いた。彼女はきまり悪げなまた喜びにたえないような微笑を浮べて、子供を見守った。
「おう、かわ
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