て猿《さる》がおかしな踊をおどり、方々の家でお金やお米などを少しずつもらって、はてしもない旅を続けてるのでした。大きな町や都会をきらって、田舎《いなか》の方ばかりを廻っているのでした。都会よりも田舎の方が、のんびりとして気持ちもよく、お金もかからないというのです。宿屋がないような辺鄙《へんぴ》なところへ行くと、雨の降る間は幾日も神社の中に泊っていたり、天気の日には木影《こかげ》に野宿《のじゅく》したりしました。下にござを敷き上に毛布をかけて、爺さんと猿とは一緒に寝ました。そのござと毛布との外に、小さな桶《おけ》と鍋《なべ》とを持っていて、自分で御飯をたいて食べるのでした。
三
さて、猿爺さんの猿が村へ物をもらいに来たとすれば、猿爺さんも村の近くに来てるに違いありません。そして、猿爺さんは[#「猿爺さんは」は底本では「猿爺さんんは」]きっと病気かなんかで動けなくて、猿が一人でやって来るのに違いありません。
「このままほったらかしてもおけまい」
そう言って村の人達は、猿爺さんの居どころを探《さが》し始めました。けれどもなかなか見付かりませんでした。それにまた猿の方でも、
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