キンショキショキ
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)ある片田舎《かたいなか》の村
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|掬《すく》いして
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)猿爺さんは[#「猿爺さんは」は底本では「猿爺さんんは」]
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一
今のように世の中が開けていないずっと昔のことです。ある片田舎《かたいなか》の村に、ひょっこり一匹の猿《さる》がやって来ました。非常に大きな年とった猿で、背中に赤い布をつけ、首に鈴をつけて、手に小さな風呂敷包《ふろしきづつ》みを下げていました。
村の広場で遊んでいた子供達は、その不思議な猿を見付けて、大騒ぎを始めました。けれども猿は平気な顔付で、別に人を恐がるふうもなく、わいわい騒ぎ立てる子供達を後にしたがえて、蔵のある大きな家の前へやってゆきました。そして、そこの庭のまん中で、首の鈴をチリンチリン鳴らしながら、後足で立ち上がっておかしな踊りを始めました。
子供達はびっくりして、猿のまわりを円《まる》く取り囲んで、黙ってその踊を眺めました。踊が
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