と、猿をちらと見たという村の老人の一人が、こんなことを言い出しました。
「あれは猿爺《さるじい》さんの猿じゃないかな」
それを聞いて、他の老人達も言いました。
「なるほど、猿爺さんの猿にちがいない」
そこで、あの猿は猿爺さんの猿だろうということになりましたが、村の若い人達は、その猿爺さんのことをあまりよくは知りませんでした。で老人達はくわしく話してきかせました。
猿爺さんというのは、五年に一度くらいずつ村に廻ってくる、田舎廻《いなかまわ》りの猿使いの爺さんでした。長い髪の毛も胸に垂れてる髭《ひげ》も、昔からまっ白であって、日に焼けた額《ひたい》には深い皺《しわ》がよっていて、幾《いく》つになるのか年齢《とし》のほどもわかりませんでしたが、方々の国で様々なものを見てきて、人の知らない不思議なことを知っている、妙な人だそうでした。そして、この爺さんの連れてる猿がまた、非常に大きな年とった猿で、いつも背中に赤い布をつけ首に鈴をつけて、爺さんと友達のように並んで歩いていて、爺さんの言葉は何でもよく聞き分けるのだそうでした。
そしてこの二人は、爺《じい》さんがいろんな歌をうたいそれにつれ
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