来ました。
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いーつつ、いつつ、
いっしょにみんな、とんで出ろ。
王子様のもてなしに、
わあそび、こそび、
くるりと廻って、くるくるり。
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 すると、眼の前の芝地《しばち》は森の精でいっぱいになりました。みんな頭には、いろんな草や木の花を一つずつつけていました。そして手をつないで、円《まる》く輪になっておもしろい唄を歌いながら踊りました。
 王子はそれを見て、夢のような心地《ここち》になられました。森の精の踊りはいつまでも続きました。いくら続いても飽《あ》きないほどのおもしろい踊りでありました。
「お時間じゃ、お時間じゃ。御殿《ごてん》のしまるお時間じゃ」と、どこからかふいに声がしました。すると今まで踊っていた森の精達が、一度に高く飛び上がったかと思うと、地面に落ちつく時にはもう姿がなくなっていました。
 王子はびっくりして、あたりを見廻されますと、千草姫《ちぐさひめ》はやはり微笑《ほほえ》んだまま立っていました。そして王子に言いました。
「もう遅くなりますから、今晩はこれきりにいたしましょう。またお迎えをあげますから、その時に来て下さいま
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