お月様の唄
豊島与志雄

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)尾《お》のない

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)皆|百合《ゆり》の花

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
−−

      一

[#ここから2字下げ]
お月様の中で、
尾《お》のない鳥が、
金の輪をくうわえて、
お、お、落ちますよ、
お、お、あぶないよ。
[#ここで字下げ終わり]

 むかしむかし、まだ森の中には小さな、可愛《かわい》い森の精達が大勢《おおぜい》いました頃のこと、ある国に一人の王子がいられました。王様の一人子《ひとりご》でありましたから、大事に育てられていました。王子はごくやさしい、心の美しい方でした。
 王子は小さい時から、どういうものか月を見るのが非常に好きでした。よくお城の櫓《やぐら》に上ったり、広いお庭に出たりして、夜遅くまで月を見ていられました。月を見ていると、亡くなられたお母様を見るような気がしました。母の女王は、三歳の時に亡くなられたので、王子はその顔も覚えていられませんでしたが、どう考えてもお母
次へ
全17ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング