一台の機関車と、二輌の客車と、一輌の車掌車と、五人の人間《ひと》とが、一直線の線路の上で消えて無くなろうとは! そうだ、もう一時間経っても確とした報知がないなら、僕はコリンス方面監察といっしょに現場《げんじょう》へ急行しなければならないだろう。』
けれども遂に、ケニヨンからの次のような今一通の電報という形をとって、駅長のいわゆる「確としたこと」の一端が洩れて来た。
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『臨列の機関手ジョン・スレーターの死体を、当駅より二|哩《マイル》四分の一の地点なる「はりえにしだ」の藪中に発見したることを悲しむ。機関車より墜落し長堤を転がりて藪中に落ちたるもの。致命傷は頭部の負傷。附近ただいま精査中なるも列車の行方依然不明。』
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かくてその夜、駅長のブランド氏は、探偵長として鉄道会社に聘《へい》せられているコリンス方面監察と共にケニヨンへ向って出発した。二人は翌日を丸一日捜索のために費した。が、列車の行方は全然解らなかった。事実の解明を可能に導くべきような推測さえも立てるわけには行かなかった。それと同時に、しかし、コリンス方面監察の報告書によると――そ
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