かの理由で支線へはいって、後から来る普通列車を待避しつつあるのだろうか? もしくは、あったのだろうか? とにかく駅長は、セント・ヘレン、マンチェスター両駅間のことごとくの駅に一々電信を打ってみることにした。打電の順序で各駅から続々と次のような返電が来た――
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『臨列、五時当駅通過――コリンス・グリーン。』
『臨列、五時五分当駅通過――アールスタウン。』
『臨列、五時十分当駅通過――ニュートン。』
『臨列、五時二十分当駅通過――ケニヨン。』
『臨列、当駅通過せず――バートン・モス。』
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駅長と運輸課長とは驚きの余り顔を見合せた。
『僕は三十年も鉄道に勤めてるが、こんな狐に憑《つ》ままれたような事件は初めてだ。』と駅長が言った。
『ほんとうに開通以来未曾有の出来事です。ケニヨンとバートン・モスの間で何か椿事が起ったのですな。』
『だが僕の記憶にして誤《あやなり》なければ、両駅間には支線は一本も無いはずだ。どうしても、本線を走って行ったものとしか思われんがな――』
『といって、その短距離列車が同じ本線の上を………?』
『フード君、けれども外《ほ
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