仕立ることは、もちろん問題にならなかった。そこには、しかし、ただ一つの択《えら》ぶべき方法がある。カラタール氏の乗車賃を分担して、その臨時列車の空《す》いた室を譲ってもらうことである――カラタール氏さえ承諾してくれるなら。
が、そのような申出《もうしで》に対して不服を言う人はまず無いだろう。けれども、カラタール氏はそうではなかった。彼は何故《なにゆえ》か絶対的に相客のあることを拒んだ。一たん買切った以上は、列車は自分の専用であると素気《すげ》なく刎ねつけたのである。
ホレース・ムーアは、自分の採るべき唯一の方法が、夕方の六時にリヴァプール発の普通列車に乗るより外《ほか》にないことを知って、極度の困惑の色を面《おもて》に表わしながら停車場を出て行った。停車場の時計でまさに午後四時三十一分、臨時列車は、佝僂《せむし》のカラタール氏と巨人のような従者とを載せ、白い湯気を吐いてリヴァプール駅を発車した。マンチェスター駅まではひた走りに走ることが出来るはずだった。六時前に早くもその大停車場に到着する予定をもって。
午後六時を過ぎること十五分。リヴァプール駅の事務員達は、マンチェスター駅から
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