的のために着けられた。第二の客車は、例によって、一等室と一等喫煙室、二等室と二等喫煙室という四室に区劃《くぎ》られていた。その機関車に近い方の第一室が、二人の旅客のために用意された客車で、他の三室は空だった。車掌としてジェームス・マックファースンが、火夫としてはウィリアム・スミスがそれぞれ乗込むことになった。
カラタール氏は、一|哩《マイル》について五|志《シルリング》という規定の特別乗車賃の割合で、総額五十|磅《ポンド》五|志《シルリング》を支払うが早いか、あくあくしながら、例の連れの男を促して、まだ三十分はたっぷり間があろうというに、はや仕立てられた客車に乗込んで定めの室に席を占めた。
ところがカラタール氏が駅長室から出て行ったのと、ほとんど入替《いれかわり》に、ホレース・ムーアと名のる一見軍人風の紳士が慌ててそこへ入って来た。彼は倫敦《ロンドン》にいる自分の妻が危篤のために、上京するべく今は一瞬間も失ってはならないというのだ。奇妙な偶然である。真に偶然である。その紳士の心配そうな顔を見ては、駅長も心から出来るだけの便宜をはかってやりたいと思った。といって、更に第二の特別列車を
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