の妹のリッジー・ドルトンを連れて、手紙の趣のように紐育《ニューヨーク》へ渡って、指定のジョンストン館《ハウス》に三週間も滞在した。けれども夫たる失踪者からは一言の知らせさえもなかった。というのは、大方、それについて無分別にも色々書き立てたある新聞の記事に智慧をつけられて、本人のマックファースンが「ここでうかうか妻に会っては足がつく」と覚ったためでもあろう。細君の一行も、またリヴァプールまですごすごと引返《ひっかえ》さなければならなかった。
かくして、カラタール氏等を載せた臨時列車の紛失事件が未解決のままに、今年まで徒《いたず》らに八年の歳月が流れた。ただ、不幸な二人の旅客の来歴を精《くわ》しく探査するにつれて、カラタール氏なる人が中央|亜米利加《アメリカ》における財政家で、政治的代表者であったこと、彼が欧洲への航海中、居ても立ってもおられないほど巴里《パリー》へ早く足を入れたがっていたという事実だけが解ったのであった。それからあの連れの男というのは、船客名簿にはエドゥアルド・ゴメズと記入されたが、この男こそは稀代の兇賊として、また暴漢として中央|亜米利加《アメリカ》を震駭《しんがい》
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