『我が親愛なる妻よ。――自分は今まで考えに考えた。が、自分は到底お前と別れ別れになっておるに忍びないことを覚《さと》った。リッジーに対しても同様である。自分はこの心と戦って来たのだ、けれども自分の胸にはやはりいつもいつも御前が帰って来るのだ。英貨にすれば二十|磅《ポンド》の金、それだけの金を自分はお前宛に送る。それだけあればお前とリッジーとが大西洋を航海して来るに充分だと思う。そしてお前は、サザムプトンへ寄港するハンブルグ汽船会社の船でやって来るがいい。[#「。」は底本では欠落]船もよいし、リヴァプール汽船会社のよりは賃金も廉《やす》い。もしお前がここへ来てくれて、ジョンストン館《ハウス》へ投宿するなら自分は何等かの方法で、お前に会う手段を講ずるつもりである。しかし現在自分は身の置き所もないほどの身だ、それにお前達二人を忘れかねて、非常に不幸な日を送っているのだ。今はこれにて、お前の愛する夫から――ジェームス・マックファースン。』
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そして、一時は、この手紙こそやがて全事件の真相を説明するものに相違ないのだと人々からは確信をもって予想されもしたのだ。彼女はそ
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