いたりした。ある者はまた次のように論じた。『列車は過《あやま》って軌道《レール》を滑り出した後《のち》、数百ヤードの間|軌道《レール》に沿うて流れておるランカシアー運河の中へ陥没してしまったものだろう』と。けれどもこの臆説は不幸にしてたちまち却下された。運河の水深が発表された結果、そうした巨大な物体を水底に匿《かく》し横たえておるべく余りに浅いことがわかったのである。その外《ほか》にも、いろいろ勝手な臆説、仮説を立てるものもあった。が、その時に当って、突如として全く思いがけない一つの挿話《エピソード》が湧上った。
というのは、例の失踪列車の車掌だったジェームス・マックファースンの妻が、夫マックファースンから一通の手紙を受取ったということなのだ。手紙は、その年の七月五日付で、米国の紐育《ニューヨーク》から投函されたもので、彼女の手に渡ったのは七月十四日の事だった。それは、彼女の証言によれば、紛《まが》うべくもない本人の筆蹟で、殊に中には、米国の五|弗《ドル》紙幣で百|弗《ドル》の大金が封入してあったのだ。手紙には宿所が記入してなかったが、文言は次のようだった――
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