の格闘中その辺にいたものと見え、死の凹みの附近に無数の足跡があったが、それ以来全く行方不明で、莫大な賞金もかけられたことだし、ダートムアのジプシーどもがしきりに目を配ってもいるのだが、全然知れない、最後に、ハンタの食べ残した夕食を分析してみると、その中には阿片末がかなり多量に混入していることが分った。しかも、同夜同じものを食べた他の人々には少しも別条がなかった。以上がすべての臆説を排除し、出来るだけ粉飾を加えないで述べた事件の骨子だ。今度は警察がこの事件をどう取扱ってるか、その要点だけをいってみよう。
 この事件を担当させられたグレゴリ警部は、極めて敏腕な人物だ。もう少し想像力さえあったら、この方面で非常に出世し得る人だと思う。警部は現場へ出張すると、すぐ当然嫌疑のかかってある男を発見して引捕まえた。その男は附近では広く知られていたから、探し出すのは何んの困難もなかった。フィッロイ・シムソンという名前だ。立派な生れで立派な教育のある男なんだが、競馬ですっかり失敗して、今ではロンドンのスポート倶楽部で、内々小さな賭事の胴元をやって暮してるということだ。持っていた賭帳を調べてみると、白銀の
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