かけ上ってみると、そこからは八方の荒地《あれち》が見渡せるが、どっちを見ても名馬の影すら見えないばかりか、何か不吉なことが起ったんだなという予感を起させられたのだった。
 厩舎から四分の一哩ばかりのところのはりえにしだ[#「はりえにしだ」に傍点]の藪にストレーカの外套が引っかかっていた。そしてすぐその先に鉢形の凹《くぼ》みがあって、その底に不幸な調馬師の死体が発見された。何か重い兇器でやられたらしく、頭蓋骨は粉砕され、腿にも傷があった。腿の傷は極めて鋭い兇器でやられたらしく、長く鮮かに切られていた。ストレーカ自身もよほど烈しく抵抗したものと見え、右の手には柄元までべっとり血のついた小さなナイフをしっかりと握り、左の手には赤と黒との絹の襟飾《ネクタイ》を掴んでいた。この襟飾《ネクタイ》は、前夜厩舎へ来た見知らぬ男のつけていたものに間違いないと女中が申し立てた。
 昏睡からさめたハンタも、この襟飾《ネクタイ》の持主に関しては同様のことを証言した。そして自分がこんなに眠ったのも、あの男が窓の外に立ってる時、羊のカレー料理に薬を混ぜたのに相違ないと力んだ。
 失踪した名馬に関しては、ストレーカ
前へ 次へ
全53ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ドイル アーサー・コナン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング