いささか驚かされた。彼がわたしに対して礼儀を守らず、また親切でなかったのは、この時がまったく初めてのことであった。私はこの文を書きながらも、船長が非常に興奮して、頭の上をあっちこっちと歩きまわっているのを聞くことが出来る。
わたしはこの船長の人物描写をしてみたいと思うが、わたし自身の心のうちの観念が精《せい》ぜいよく考えて見ても、すでに曖昧糢糊《あいまいもこ》たるものであるから、そんなことを書こうなどというのは烏滸《おこ》がましき業《わざ》だと思う。私はこれまで何遍も、船長の人物を説明すべき鍵《かぎ》を握ったと思ったが、いつも彼はさらに新奇なる性格をあらわして私の結論をくつがえし、わたしを失望させるだけであった。おそらく私以外には、誰しもこんな文句に眼をとめようとする者はないであろう。しかも私は一つの心理学的研究として、このニコラス・クレーグ船長の記録を書き残すつもりである。
およそ人の外部に表われたところは、幾分かその内の精神を示すものである。船長は丈《たけ》高く、均整のよく取れた体格で、色のあさ黒い美丈夫である。そうして、不思議に手足を痙攣的に動かす癖がある。これは神経質のせい
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