世界怪談名作集
北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
ドイル Arthur Conan Doyle
岡本綺堂訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)氷錨《アイス・アンカー》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一度|罵《ののし》ったあとに、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)うみうし[#「うみうし」に傍点]などが
−−

       一

 九月十一日、北緯八十一度四十分、東経二度。依然、われわれは壮大な氷原の真っただ中に停船す。われわれの北方に拡がっている一氷原に、われわれは氷錨《アイス・アンカー》をおろしているのであるが、この氷原たるや、実にわが英国の一郡にも相当するほどのものである。左右一面に氷の面が地平の遙か彼方《かなた》まで果てしなく展《ひろ》がっている。けさ運転士は南方に氷塊の徴候のあることを報じた。もしこれがわれわれの帰還を妨害するに十分なる厚さを形成するならば、われわれは全く危険の地位にあるというべきで、聞くところによれば、糧食は既にやや不足を来たしているというので
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