か、あるいは単に彼のありあまる精力の結果からかもしれぬ。口もとや顔全体の様子はいかにも男らしく決断的であるが、その眼はまがうべくもなしに、その顔の特徴をなしている。二つの眼は漆黒《しっこく》の榛《はしばみ》のようで、鋭い輝きを放っているのは、大胆を示すものだと私は時どきに思うのであるが、それに恐怖の情の著るしく含まれたように、何か別種のものが奇妙にまじっているのであった。大抵の場合には大胆の色がいつも優勢を占めているが、彼が瞑想にふけっているような場合はもちろん、時どきに恐怖の色が深くひろがって、ついにはその容貌全体に新しい性格を生ずるに至るのである。彼はまったく安眠することが出来ない。そうして、夜なかにも彼が何か呶鳴《どな》っているのをよく聞くことがある。しかし船長室はわたしの船室から少し離れているので、彼の言うことははっきりとは分からなかった。
 まずこれが彼の性格の一面で、また最も忌《いや》な点である。私がこれを観察したのも、畢竟《ひっきょう》は現在のごとく、彼とわたしとが日《にち》にち極めて密接の間柄にあったからにほかならない。もしそんな密接な関係が私になかったならば、彼は実に
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