れに驚かされたのです。彼の女は何にも云いませんが、しかし私はその目の中に、非常な驚怖《きょうふ》を見て取りました。それでそれを穿鑿《せんさく》してみたいと思ったわけです」
ホームズは紙片を取り上げて、太陽の光線をその上に直射せしめた。その紙片は、ノートブックから離し取ったもので、鉛筆で次のような象形《かたち》が画かれてあった。
[#図1入る]
ホームズはしばらくの間、それを検《しら》べていたが、やがて、叮嚀《ていねい》に折りたたんで、自分の手帳の間にはさんだ。
「これはとても面白い、稀有の事件かもしれない」
彼は云った。
「ヒルトン・キューピットさん、あなたはお手紙の中《うち》では、二三具体的なことを書かれてありましたが、しかしこの友人のワトソン博士のために、もう一度一通りお話し下さいませんか」
「どうも私は説明は拙劣《まず》いのですが、――」
我等の訪客は、その大きな強い手を、組んだり放したり、もじもじさせながら、神経質に語り出した。
「いずれお解りにならないところは、そちらの方からお訊ね下さい、――私は去年、結婚した時のことから申しますが、まずその前にお耳に入れておきたいこ
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