云った。
「どんな問題でも、一通りわかってしまうと君には皆小供だましのように解り切ったものになってしまうのだ。ではここに未解決の問題があるが、ワトソン君、これには君はどう云う解釈を与えるね?」
 彼は一枚の紙を机の上に放り出して、また化学の分析の方に向き直った。
 私はそれを見て驚いてしまった。それは、何かの符牒の文字のようなものであった。
「何んだ、――これは小供の絵ではないか――ホームズ君!」
 私は叫んだ。
「ははははははは、そんなものに見えるのかね!」
「じゃ何なんだね?」
「これは、ノーフォークのリドリング公領[#「リドリング公領」は底本では「リドリユグ公領」]のヒルトン・キューピット氏が、しきりに知りたがっていることなんだがね。この謎のような問題は、第一回の郵便配達で来て、その人は二番列車でその後から来ることになっているのだ。ああワトソン君。ベルが鳴っているが、あるいはその人かもしれない――」
 重々しい足取りが、階段にきこえたと思う中《うち》に、一人の紳士が入って来た。脊の高い、血色のよい、綺麗に剃《あ》てられた紳士で、その澄んだ目、輝く頬、――と、ベーカー街の霧の中から
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