ひねりまわさない中《うち》に解ったと云うわけさ」
「どうも僕には何の事か解らないね」
「いや誠に御もっとも至極――しかしこれはごく手短に説明することが出来るんだ。ここにそれぞれ取り外れていた、鎖の輪があるからね。第一には、君が昨夜|倶楽部《くらぶ》から帰って来た時は、君の左の手の指のあたりに、白いチョークがついていたこと。第二には、君が玉を突く時は棒《キュー》の辷《すべ》りをよくするために、チョークをつける習慣のあること。第三には、君はサーストン氏との外《ほか》には、決して玉を突かないこと、――第四には君が四週間前に、サーストン氏は、南アフリカの採金地の株式募集をやっているが、その締切りまでは一ヶ月あるので、君にも加入してくれと云って来たと話したことのあったこと、――第五には、君の小切手帳は、僕の抽斗《ひきだし》に入って錠が下りているが、しかし君はその鍵を決して僕に請求しなかったこと、――第六には、君がこのようにして、この株式に申込をしなかったと云うこと、――」
「ははははははは、何と云う馬鹿馬鹿しく解り切ったことだ!」
私は叫んだ。
「全くその通りさ」
彼はちょっと不気嫌になって
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