笛を吹いたり歌ったりし、またやがては、全くその長い謎に閉口してしまったように、額をすくめ目を茫然とさせていた。それから遂に彼は思わずも歓喜の声を上げながら起ち上って、盛んに手をもじもじさせながら室《へや》の中をぶらぶらと歩き出した。それから海底電信機式に、長い電報をかいた。
「もしこの返事が、僕の注文通りのものだったらワトソン君、――君の蒐集《しゅうしゅう》の中に、また実に素晴らしいものを加えることが出来るんだがね」
彼は云った。
「明日は我々はノーフォークに行って、あの人間が苦しんでいる秘密事に、決定的な新な展開を与えることが出来そうだ」
私はとても好奇心をそそられてしまった、しかしまた私は、彼はいつも自分の方から、いい時を見計らって話してくれることはよく知っているので、私の方から訊ねることはしなかった。
しかしその返電はなかなか来なかった。ホームズはその間を、呼鈴に注意しながら、ヤキモキして待った。二日は空しく過ぎてしまった。しかしその二日目の夕方、やっとヒルトン・キューピットから、一通の手紙が来た。その手紙によれば、ヒルトン・キューピットの身辺は、その後は静穏であったが、し
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