あたりの人より頭だけが突き出ていた。私は、私達の誰もが、彼の肩まであろうとは思えなかった。彼は慥《たし》かに六|呎《フィート》半より短かいことはなさそうだった。たくさんの悲しそうな、弱々しい顔の間に、そんな精力と決心に満ちた顔を見て不思議な気がした。私にはそれが吹雪の夜に、灯《ひ》を見出した時の様に思われた。私は彼が私の隣に来ていると云うことを、見つけた時、うれしかった。そうして更にうれしかったことは、真夜中に私の耳近くにささやきの声をきき、そうして私達の間を隔ててあった板に穴を彼があけたことを見つけたときであった。
「おい、君。君はなんと云うんだい? どうしてここへ来たんだい?」
と、彼は云った。
私は彼に話した。そうして反対に彼が誰であるかを聞いた。
「おれは、ジャック・プレンダーガストだ」
と彼は云った。
「たぶん、君は前におれの名前をきいていただろう」
私は彼の事件をきいてしっていた。何故《なにゆえ》なら、私が収監される少し前に、その事件は国内に大きなセンセイションを起こしたものだった。彼は財産のある、よい家庭に人となった男であった。しかも放埒な性質のため、巧《たくみ》な
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