達した年のことで、古くから使っていた罪人船は、黒海で運送船として使用されていたのであった。で、政府ではそのため、それらの罪人を送るには余り適当でない、小さな船を使わなくてはならなかったのだ。そのグロリア・スコット号と云うのは、支那茶の取引きに使われていた船だったのだけれど、古い型で船足がのろくて、広い船梁を使用した船だったので、新しい速い船が、彼女をその仕事から追い出してしまったものであった。それは五百|噸《とん》の船で廿六人の水夫、十八人の兵士、一人の船長、三人の助手、医者が一人、牧師が一人、それから番兵が四人、――つまりつごう百人ばかりのものが、ファルマウスから出帆した時、その船に乗っていたのだと云う話だった。
罪人の入っている部屋と部屋との間のしきりは、普通罪人船で使われている様な、厚い樫の木の代りに、薄いもろい物だった。わたしの後側の部屋にいる男を、私は埠頭に引き出された時に、はっきり見ることが出来た。その男は、すべすべした顔の、鼻の細長い、そうして胡桃割《くるみわ》りの様な口をした若い男であった。彼は愉快げにそり返って意気揚々として歩いていた。そうして背が非常に高かったので、
前へ
次へ
全47ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドイル アーサー・コナン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング