の裏葉を書いてしまつて、それから巴里《ぱりー》へ送る手紙を書いた。
九日
六時頃まで眠つたり覚《さ》めたりして居たが今日《けふ》も身体《からだ》は怠《だる》い。昨日《きのふ》送る筈だつた某誌の選歌をしようと思つて出しながら気が進まないので火鉢にじつと当つて居る処《ところ》へ金尾《かねを》さんが来た。源氏の再版の祝《いはひ》だと云つて煙草《たばこ》を十二|色《いろ》交ぜて持つて来てくれた。嬉しくてならなく思つた。飲むのよりも珍しもの好《ず》きの私が見たこともないやうないろいろの色をして交つた包《つゝみ》だの小箱だのが私の所有になつたのが嬉しいのである。土曜日であるから光《ひかる》と秀《ひいづ》は午後一人は木下さんへ、一人は本多さんへ遊びに行つた。三時過ぎにやつと選歌の原稿が出来た。もう一つこの仕事があると思ふと一層|身体《からだ》が怠《だ》るいやうに思はれて、机にもたれて風の吹き廻る庭を見て居た。古尾谷《こをたに》さんが見えた処《ところ》へ摩文仁《まぶに》さんも来た。この若い琉球の詩人と話すのに是非出さなければならない高い声が出さうに今日は思はれないから、前に話さないで本を出して古尾
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