の旅を大反対の修《しう》さんの持つて来た話なのであるから、私は苦しんで居るのだ、出来さうにないわけだと私は思つて居た。茶の間へ来ると、
『母様《かあさま》は面白い人ね、平野さんのお父《とう》さんと話してたのでせう、平野さんぢやない人と話をするなんか。』
 と七瀬が云つた。平野さんだと云ふと、
『さう、やつぱし平野さんの子供の方なの。』
 と驚いたやうに云つて居た。子供の床《とこ》をとつて居るうちに倒れる程頭が痛んで来た。私は昼の着物を着たまゝで子供の寝る時刻から床《とこ》に入《い》つて居た。私は眠りさうなのであるが桃が明日《あした》の買物に行《ゆ》くと云ふのを留《と》めるのも何だと思つて、
『ああ。』
 と云つて出してやつた。桃は玄関の戸を閉め寄せて行つた。恐《こは》い夢を見て目を開くと九時であつた。桃を呼んで見たがまだ帰らないらしい。風が戸に当つて気味の悪い音を立てゝ居た。私は今見た夢の中の心持ちの続きも交つて居て恐しさにどうすれば好《い》いかなどゝ思つて居た。十五分程して桃が帰つて来たので嬉しかつた。頭痛はもう癒《なほ》つて居た。私は桃を寝させてからまた仕事をしだした。十一時頃に藤
前へ 次へ
全12ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング