る事は暴を以て相酬《あいむく》いるので、本本《もともと》互に謙遜し、互に尊敬し協和して男女各自の天分を全くすべき真理に悖《もとっ》ておりますから、一方を服従させようというのでなく、服従するなら互に真理の前に服従し得《う》る立派な人格を養って後に結婚するのが大切でしょう。

 離婚は悲しむべき事で或場合には罪悪と名《なづ》けても可《よ》いと考えますが、また或場合には罪悪から逃《のが》れる正当な手段と見る事も出来ますから、十分その真相を調べた上でなければ是非の判断は困《むずか》しい。現に藤井女史の離婚は新聞紙の報道や教育家諸先生の御意見だけを伺ったのでは何とも申しかねます。これは近頃|専《もっぱ》ら事実を尊ばれる小説家の微妙な観察に由《よっ》て委《くわ》しく描写して戴《いただ》いたならば明白になるかも知れません。藤井氏の場合に限らず、離婚という面白からぬ事件はこの後|追追《おいおい》殖《ふ》えて行くでしょう。学校教育と家庭とが全き人間を作る事を忘れて、畸形《かたわ》な賢母良妻主義や夫唱婦和説を固守している間はやむをえない現象だと存じます。

 三輪田学士はまた「環女史の離婚は何か女史の方か
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