ている事実を両女史は何と見られるのでしょうか。甚だ露骨な事をいうようですが、両女史は経済的労働を必要とする家庭にお育ちにならず、従ってそういう労働の習慣をお持ちにならないのではないのですか。
今度の戦争に由って、意外にも女子の労働能力が男子に比べて甲乙のないことが確認される機会を得ました。最早この事は多くの弁明を要しない事実ですから、右に挙げた第二の反対説も根拠を失ったといって宜しい。第三の反対説は厳粛な文化生活の意義を解しない人々のセンチメンタリズムとして唯だ微笑して置けば好いでしょう。
女子を閨房《けいぼう》と台所とに幽閉することなく、これに職業を与える事は我国においても早くから実行されていますが、しかしその職業の範囲を男女平等主義に由って拡げることについては全く拒まれています。リップスは女子の職業を肯定して「この問題に対する一般的の解答は、すべての人はその特殊なる天性と能力とに従って、その力に及ぶ限りの利と善とを(即ち文化価値を)この世界に造り出さなければならぬという規則である。この外に婦人の職業を決定すべき特殊なる規則の必要はない」といいました。女子にも一切の職業を解放し
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