帯責任の文化生活を実現しようとするには、職業の自由を一斉に享有することを前提としなければなりません。
 世にはこれに対して沢山の反対説があります。女子の能力範囲を良妻賢母主義に局限して経済的独立の不可能をいう論者があり、また女子の現在の心理、体質、境遇だけを根拠にして労働能力の悲観的であることをいう論者があり、また女子を装飾物や玩弄物と見た男子の迷信的感傷的感情から、女子が職業に就くことを悲惨の行為であるという論者があります。しかし最も古代からの労働的精神と労働その物とを神妙に維持している農民階級の女子を初め、屋内工業に従事している近代の女子が、今日もその母性に属する労働と共に経済的労働を並行させた立派な成績を示しているのを見れば、第一の反対説は消滅すべき運命を持っています。
 平塚らいてう[#「らいてう」はママ]、山田わか両女史はその御自身の経験を基礎として、第一の反対説を唱える人たちですが、両女史が母体の経済的独立が不可能だとされるのは、何か両女史御自身の上に、及び両女史の境遇に、それを不可能にする欠陥がありはしませんか。農民や漁民階級の労働婦人が立派に妻及び母の経済的労働を実証し
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