また国民全体の意志に依って決することが、合理的な民主主義の政治である限り、或年頃に達して独立の人格を持った国民――例えば満二十五歳以上に達して、白痴でなく、六カ月以上一定の地に住し、現に刑罰に処せられていない者――こういう意味の国民全体が衆議院議員の選挙権と被選挙権とを持って、間接または直接に国家の政治に参与することは、立憲国民に固より備った正当な権利であるのです。かくてこそ初めて国民全体が平等に参与する政治、即ち民主主義の政治と称することが許されると思います。
 こう考えて来ると、従来の納税額を標準とした選挙権の分配の如何に不公平であるかは細論せずして明白になります。従来のように直接国税拾円を選挙資格とすると、国民の中から参政権を持つ者は纔《わず》かに百四十二万二千百十八人(大正六年)を数えるに過ぎず、これを今度憲政会から提出した改正案のように納税額を弐円に引下げたとしても、この倍数である三百万人内外の選挙有権者を得るに止まっています。かような少数の人数に由って選挙された衆議院議員が国民全体の政治的代表者といわれないことは弁ずるまでもありません。
 納税額を標準とする選挙法の第一の不
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