の権利」です。
 近頃の流行語である「民主主義」というものも、原語のデモクラシイが十八世紀や十九世紀で持っていた意味とは違って非常に進化し、要するに今日の解釈では茲《ここ》にいう平等の権利を主張する思想に外ならないということを、私たちは学者に依って教えられます。「民主主義」が専ら政治上の標語であったのは過去のことで、今はあらゆる生活の体系にこの語を用います。即ち産業組織の民主主義化、文学美術の民主主義化、家庭の民主主義化という類です。例えば、家庭の民主主義化というのは、夫婦の愛情の平等、夫婦の経済的労働の平等、夫婦の財産権の平等、父権と母権の平等、親と子との権利の平等、兄弟姉妹の権利の平等の如きをいい、政治上や学問上に民主主義を唱える人でも、家庭において特に父権や、良人の権利や、兄の権利を偏重し、自己以外の家族の持っている正当な個人的の権利を圧制|蹂躙《じゅうりん》するような言動があれば、その人は決して民主主義の徹底した実行者とはいわれないのです。良人を凌圧《りょうあつ》したり、妻を虐待したり、我子を打擲《ちょうちゃく》したりする男女は、如何に民主主義を口にしても、その実質は各人に固有
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