少しは人並の量見を持たせてやってもよいという、特に男子側から御慈悲を掛けて御世辞半分に言い出された問題である。そうしてこの問題は格別婦人側の注意を惹《ひ》かなかった。近頃はまたこの問題の反動として、多数の男子側から女子実用問題が唱えられて来た。即ち女子に高等教育は不必要だ、手芸教育が必要だ、女子は柔順に教育しなければならぬというのである。女子に高等教育を授ける弊害としては、折から英国に勢力を得て来た女子参政権運動を例に引いている。女子は永久に男子に隷属すべきものだ、解放などは以《もっ》ての外《ほか》だという権幕である。例の保守的思想が時を得顔《えがお》に跋扈《ばっこ》するのであるからかような議論は毫《ごう》も驚くに足らないわけであるが、そういう男子が自分らだけは昔から自由を享得していたような態度であるから滑稽《こっけい》である。日本の男子は維新の御誓文と憲法発布とに由って初めて人並に解放せられたのではないか。自分らの解放せられた喜びを忘れて婦人の解放を押え、剰《あまつさ》え昔の五障三従《ごしょうさんしょう》や七去説《しちきょせつ》の縄目《なわめ》よりも更に苛酷《かこく》な百種の勿《なか
前へ
次へ
全12ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング